木更津きらら歯科の歯科ブログ

「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。

23年07月23日

誤嚥性肺炎と口腔ケア

木更津きらら歯科は、『食べて飲み込む』というお口の機能ををサポートします。今回は高齢者の健康を著しく低下させたり、死亡原因となることから大きな問題となっている、誤嚥性肺炎と口腔ケアについてお話ししたいと患います。

■肺炎は死につながる重大な病気です

こちらは千葉県の人口動態統計のうち、死亡の原因をまとめたものです。悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患に続き、肺炎や誤嚥性肺炎と続いています。腕災で亡くなる人のほとんどが65歳以上のご高齢者です。高齢化社会により肺炎で亡くなる人は増加しており、、その多くが誤嚥性肺炎によるものと言われています。

■誤嚥性肺炎とは

物を飲み込むことを嚥下といい、嚥下すると食ペ物は口から食道、胃へと入ります。このとき嚥下機能が低下していると、食道ヘ入るものが誤って気管に入ってしまいます。これを誤嚥といいます。誤嚥性肺炎は、口の中の細菌や唾液が食べ物と一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ってしまうことで生じる肺炎です。

■摂食嚥下機能

ではまず、食べて飲み込む、摂食嚥下機能についてご説明しましょう。摂食嚥下機能というのは、食べ物を口の中にとりいれて、噛んで、唾液とまぜあわせて食道のほうにそれを送り込むお口やお口の周辺の機能です。一連の動作を5段階に分けて「摂食嚥下の5期」と呼ぶこともあります。

  • 先行期:目で見て、食べ物と認識し、一口で口に入れることができる大きさか、嚙みきれる硬さかどうかなどを判断します。
  • 準備期:食べ物を口から入れ、咀嚼してすりつぶし、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい塊にします。
  • 口腔期:舌や頬の筋肉を使い、食べ物を口の奥からのどへ送りこみます。
  • 咽頭期:脳の嚥下中枢からの指令を受け、食べ物を食道へ送りこみます。声を出す部分は閉じ、気道を防御する機能が働きます。
  • 食道期:食べ物を胃へ送り込みます。食道入り口部の筋肉は収縮して閉じられ、食べものが逆流を防ぎます。

食べ物を飲み込んで胃へ送り込むために、脳やお口はとても複雑な動作を行っているんですよ。 

この5つの段階のどこかで、動作がうまく働かないことを摂食嚥下障害といいます。

■摂食嚥下障害

とくにご高齢者は、摂食嚥下障害を起こしやすいのです。ご高齢者はいろいろな面で、お口の周辺が衰えてきます。歯が失われていたり、舌の運動機能が低下したりしています。咀嚼や唾液の分泌も、若い人と同じようにはできにくかったりします。お口の中の感覚が鈍くなったり、食物をのどへ送り込む筋肉が衰えていくことも考えられます。

摂食嚥下障害は、食物をとりこめないことにより栄養状態が低下を招いたり、脱水症状の原因となります。食べる楽しみを感じられなくなり、生活の質が下がってしまいます。そして食べ物をうまくあるべきところに飲み込むことができず、気道に間違ってはいってしまうことも起こりやすくなるのです。

■誤嚥性肺炎の原因

食べ物の一部あるいは唾液が、食道のほうではなくて、気管のほうにはいってしまうことを誤嚥、それによって肺炎が生じることを誤嚥性肺炎といいます。

誤嚥性肺炎は、ご高齢者にとってはとても深刻な病気です。特に要介護高齢者では、死因の第1位の疾患が、肺炎と言われています。しかもその肺炎の原因が多くは誤嚥ということがわかっています。

そしてここが重要なのですが、誤嚥性肺炎の原因は口の中の細菌であることが多くみとめられるのです。お口の中の細菌が、気管や肺にはいって肺炎を起こすのが誤嚥性肺炎です。

■摂食・嚥下障害のサイン

摂食・嚥下障害がある人には、体型、筋肉の付き方、姿勢など、全身に及ぶ外見的な特徴がいくつか見られます。次のような様子が見られる方は、注意が必要です。

  • ひどくやせている
    ひどくやせている方は、のどの筋肉の収縮力が低下しており、飲み込みがうまくいかなくなることがあります。
  • のど仏が下がっている
    のどの筋力が衰えると、のど仏の位置も下がります。食べ物をごっくんと飲み込むときにはのど仏を持ち上げる必要がありますが、この動きに時間がかかるようになります。
  • 首に力が入っている・首の筋肉が硬い
    首がしなやかに動かないと飲み込みもスムーズにきません。腹筋が弱まって首や肩で呼吸をしていたり、寝たきりで首が固まった状態になると飲み込みがうまくいかなくなります。
  • 咽猫背
    顔が前に出てあごが上がり、のどの筋肉が突っ張った状態になって飲み込みにくくなります。

■誤嚥性肺炎の症状

肺炎の特徴的な症状としては、「激しく咳き込む」「高熱が出る」「濃い痰が多くなった」「呼吸が苦しい」などがありますが、ご高齢者の場合、外見的な症状が軽いことが多く、「風邪」と間違われやすい面があります。「なんとなく元気がない」、「ぼーっとしていることが多い」、「食事に時間がかかる」「飲み込む前後にむせたり咳き込んだりする」、「口の中に食べ物を溜めてなかなか飲み込まない」などといった肺炎と無関係と思えるような症状でも、実は誤嚥性肺炎だったということがあります。

*誤嚥のタイプの分類

誤嚥は大きく4つのタイプに分類できます。1→4の順に重症度は高まり、肺炎のリスクが大きくなります。

  1. 機会誤嚥
    通常の食事を行っていて、ときどき飲食物を誤嚥してしまうケースです。
  2. 水分誤嚥
    飲み物を飲みこみにくいタイプです。水分を頻繁に誤嚥してしまうケースです。
  3. 食物誤嚥
    飲食物を飲み込むときに頻繁に誤嚥してしまうケースですが、呼吸状態は安定しています。
  4. 唾液誤嚥
    唾液を含むすべてのものを誤嚥してしまう状態です。呼吸状態も良くありません。

1.機会誤嚥と、2.水分誤嚥の場合は、嚥下トレーニングを行ったり、飲食物に少しとろみを付けるなどの工夫をすることで誤嚥のリスクを下げることができます。何を飲み込んでも誤嚥してしまう食物誤嚥や唾液誤嚥の場合は医療機関の受診が必要です。

■口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防する

では誤嚥性肺炎の予防にはどうしたらいいでしょう。お口の中の細菌が気管や肺にはいって肺炎を起こすのが誤嚥性肺炎です。ですからお口のクリーニングが最も有効な予防法です。歯みがき、舌の清掃、義歯の手入れ等により、口腔内を清潔に保ち、肺炎の原因となる細菌数を減らすことが一番です。お口の中をきれいに保つことが誤嚥性肺炎の対策として重要です。

ご高齢者ご自身や看護・介護にあたる方による従来通りの口腔清掃をしたグループと、歯科医師・歯科衛生による週1回から2回の専門的な口腔ケアを行ったグループでは、2年後には肺炎の発症率がほぼ半分にまで下がるという調査結果も報告されています。

口腔内の清掃が行き届いてない状態では、肺炎の原因となる細菌が繁殖しやすくなります。食事や飲み物をとるときだけでなく、唾液を誤嚥する場合もありますので、胃ろうなどによりお口で食事をしていなくても誤嚥性肺炎は起こりえます。口腔ケアによる口腔内を清潔に保つことが誤嚥性肺炎の予防につながります。

■誤嚥の予防法

誤嚥の予防法としては、大きくわけて2つの方法があります。食事を工夫する方法と、お口のトレーニング(摂食訓練)です。

  1. 食事の工夫
    食べ物をの編み込みやすい姿勢に調整してあげましょう。一口の量を少なくし、急いで飲み込もうとしないように声かけして見守ります。また飲み物にはとろみをつけてあげるといった工夫も有効です。
  2. お口のトレーニング(摂食訓練)
    お口の周辺の筋肉を動かしたり、刺激を加えたりして、食べるために必要な運動機能や感覚機能を促すトレーニングを行います。

誤嚥は、年をとれば誰にでも起こりうる老化現象です。ご家族にも・ご自身にも起こりうるでしょう。普段から関心を持って知識を蓄え、少しでも誤嚥性肺炎の発生を減らしましょう。

■木更津きらら歯科の訪問歯科

木更津きらら歯科では、訪問歯科や福祉施設の口腔ケアの場面において、”食べる”機能や食べ方を歯科医師が診断し、歯科衛生士が患者さまとごいっしょにトレーニングにあたったりお教えしたりいたします。木更津きらら歯科は、お口の状態を清潔に保つこと、環境を整え、トレーニングをお手伝いすることでご高齢者の健康を守るために尽力してまいります。


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