木更津きらら歯科の歯科ブログ

「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。

24年09月30日

お口の中の細菌とうまくやっていく方法

人間の住む環境は目に見えない微生物であふれています。人体の表面や口腔内、食道、胃腸といった消化管には細胞より多い100兆個を超える数の微生物(主に細菌)が存在するのだとか。人間の歴史よりずっと昔から存在している「細菌」とからだの関係を探ってみましょう。

■人体と共生する常在菌

人間のからだに住み着いている菌は、植物の叢(くさむら)のように集団を作って互いに影響をおよぼしながら生息しています。このような微生物を常在菌と呼びます。

アクネ菌という菌の名前を聞いたことがありますか? この菌は脂質を好み、ニキビを悪化させる面もありますが、皮膚の表面を弱酸性に保ち有害菌が皮膚へ定着しないように防いでくれる働きがあり、人のからだと共生する常在菌です。常在菌は、腸をはじめとして、口や鼻、皮膚や目など、からだの外に通じる器官に生息し、病原菌の侵入を防いだり、消化を助けるなど人体にとって有益な働きをしてくれるのです。

健康な人の場合、脳や心臓、腎臓などの臓器には微生物は入り込めず、細菌も存在しません。人のからだは微生物と共存する所と微生物の存在させない場所をはっきり分けることで、微生物と共存しているのです。

■細菌の花畑、口腔フローラ・皮膚フローラ・腸内フローラ

このような菌の集団はフローラ(花畑)と呼ばれています。口腔フローラ、皮膚フローラ、腸内フローラが人のからだに存在する三大フローラとして知られています。細菌というとコレラ菌や赤痢菌などの病気を引き起こす悪いものをイメージしてしまいがちですが、実際は人間のからだの中で、人間と共生する豊かな微生物の花畑なんですね。

■口腔フローラの善玉菌・悪玉菌・日和見菌

さてお口の中の細菌はどんな働きがあるのでしょう。口腔内には700種類、 1000億個以上の細菌が生息すると言われています。お口の健康によい働きをする、悪さをすることが多い、優勢な菌に味方するというどっちつかずの働きをする、という特徴によって、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と分けて考えることがあります。

*善玉菌

からだに良い働きをする菌を善玉菌と考えてみてください。悪玉菌の増殖を抑えたり、対外からはいってくる病原体(細菌、ウイルス、毒素など)を防いだり、免疫を高める、アレルギーを抑制するといった働きがあります。善玉菌と呼ばれる菌も、からだに悪い作用を持つことがあります。

*悪玉菌

口腔内の悪玉菌で恐ろしいのは、むし歯の原因となるミュータンス菌、歯周病の原因となるジンジバリス菌・フォーサイセンシス菌・デンティコーラ菌・インターメディア菌などです。大腸菌(悪株)、真菌(カビ)なども見られます。増加しすぎるとむし歯や歯周病が発生します。お口の中で悪玉菌はプラークの中で増殖するため、プラークコントトールが大切です。

*日和見菌

善玉菌、悪玉菌のうち優勢な菌と同じ働きをし、免疫が低下すると悪玉菌に加勢してからだに悪影響を及ぼします。からだの状態によっては有害な細菌となってしまうんです。日和見感染なんていう言葉もあるんですよ。日和見感染症として口腔カンジダ症がよく知られています。

■口腔フローラのバランス

便宜的に「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と言う言葉が使われますが、この口腔フローラ、悪玉菌がゼロになると善玉菌がうまく働かなくなることがあるという、不思議なバランスがあるんです。つまり、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のバランスが大切なんです。理想的な口腔内フローラの状態は、「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」の比率が「2:7:1」とされています。

フローラのバランスが乱れると、外部病原体を防ぐバリア機能が低下したり、、感染や炎症、アレルギー反応が強くでやすくなるなどさまざまな影響が現われます。

口腔内フローラのバランスを整えることが健康を守ることにつながるんですね。

*口腔フローラと腸内フローラの関係

お口の衛生状態がよくないと腸にも影響がでてきます。口腔内フローラのバランスが乱れると、腸内フローラのバランスに影響することが考えられるのです。食べ物も水分も、口から摂取され、胃、小腸、大腸と通過していきます。唾液だけでも一日1~1.5Lも飲み込んでいるんですよ。そのような毎日で、口腔フローラのバランスが乱れ、悪玉菌が増えていたら・・・ 例えば、口腔内で歯周病菌が増えすぎると、一部が大腸まで達します。大腸に定着せず通過するだけでも、腸内フローラのバランスを大きく乱す可能性があるのです。

■歯周病と全身の健康

口腔フローラの中で悪玉菌が優勢だと、むし歯や免疫の低下が起こりますが、ここで歯周病原因菌が優勢だったらどうなるのか見直してみましょう。

悪玉菌の代表格である歯周病原因菌は歯のまわりにたまったプラークの中で増殖します。プラークが歯のまわりに貼りついていると、口腔フローラのバランスは悪いほうに大きく傾きます。するとプラークの中の細菌がからだに入り込もうとするのを阻止しようとして、歯ぐきのまわりに炎症が起こります。炎症性物質は、口腔内の血管から全身にまわり、様々な重大な病気の原因となります。

*脳梗塞・狭心症・心筋梗塞

全身にまわった歯周病菌は血管内にプラークをつくり、血管の壁面からはがれたプラークは血液の通り道を狭くします。狭心症・心筋梗塞は心筋に血液の供給がなくなることで死に至ることもある重大な病気です。脳梗塞は脳血管がつまって起こります。歯周病の人は、そうでない人より脳梗塞になるリスクが2.8倍も高いのです。

*糖尿病との関係

歯周病と糖尿病は相互に悪化させあうということがわかってきました。逆に、糖尿病の患者さんが歯周病を治療すると、血糖値をコントロールする機能が回復し、血糖値がさがります。

*歯周病と低体重児の出産・早産のリスク

妊娠している女性が歯周病にかかっていると、低体重児の出産と早産のリスクが高くなることが明らかになっています。喫煙や飲酒、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。

*誤嚥性肺炎

お誤嚥性肺炎は細菌が気管から肺の中にはいることによって起こります。免疫力の低下しているご高齢者や、脳血管障害のある方は注意が必要です。お口の中の細菌が命に関わることもあるのです。

*関節炎・腎炎

お口の中の炎症物資が血液中にはいりこみ、関節炎や糸球体腎炎を起こすことがあります。歯周病は口腔内が常に炎症しており危険な細菌が常駐しているような状態のため、様々な病気の原因となります。

口の中の粘膜にある「口腔フローラ」は、お口の健康だけでなく全身の健康に大きな影響があるのです。

■口腔フローラのバランスを整えるために

口腔内フローラのバランスの乱れは、セルフケアがうまくいっていないことで起こります。乾燥や栄養の偏り、糖質の取りすぎや、生活習慣の乱れ、ストレスもよくありません。まずは歯みがき、デンタルフロスや歯間ブラシの使用で食べかすを除去し、プラークをコントロールすることで、口腔バランスをよいバランスで保つことができます。

  • 食べたらみがく
    なにか食べたら、甘い飲み物を飲んだら、歯をみがくのが一番です。歯と歯ぐきの境目意を意識してください。
  • 歯と歯の間をおそうじする
    デンタルフロスや歯間ブラシの使用を習慣にしてください。きれいに歯みがきしているつもりでも、以外と食べかすがつまっていたりします。
  • こまめにうがいをする
    ブクブクうがい、ガラガラうがいをこまめにしましょう。
  • 唾液の分泌を促す
    唾液分泌量が低下しないように、1日に1.5リットル前後の水分をとりましょう。唾液がよく分泌されるようによく噛んで食べてくださいね。
  • 食習慣を考える
    糖質はほどほどに。甘いものを食べたり飲んだりしたら歯をみがきましょう。
  • 生活習慣を整える
    ストレスをためず、よく寝て休養をとりましょう。

最後に、歯科定期検診は大切ですよ。3ヶ月に一度、プロの手で徹底的におそうじしてもらい、歯石があればそれを除去し、むし歯があれば早めに治療してしまいましょう。


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