木更津きらら歯科の歯科ブログ

「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。

24年09月29日

「歯痛」はお口のSOS! 一筋縄ではいかないその原因と対策は?

■歯の痛みはどうして起こるの?

一言で「歯が痛い」といっても、「冷たいもの、温かいものを食べると歯がしみる」「歯の奥がズキズキと痛い」「歯ぐきがはれて違和感がある」「噛みしめると痛い」「親知らずが痛い」など、いろいろな症状があります。むし歯は神経が露出して痛みを感じるのですが、冷たいものがしみる症状は歯周病の兆候かもしれません。歯周病は、痛みを感じるようになったらかなり進行していますよ。

「歯が痛い」と感じる症状は、歯そのものに由来する痛みと、歯ぐきに由来する痛みがあります。歯以外に原因がある場合もあります。

■歯に由来する痛み

*「冷たいものがしみる」と感じたら歯医者へ! むし歯の痛み

むし歯は、歯の表面のエナメル質がお口の中の酸で溶け出し穴があいてしまう病気です。むし歯の原因菌として知られているのが「ミュータンス菌」。糖質と結びついて歯の表面に付着し、プラーク(歯垢)を形成します。ミュータンス菌は糖分から乳酸を作ります。プラークがくっついたままの状態を放置していると、歯の表面が酸でゆっくり溶けていくのです。

歯の表面に穴があいただけでは痛みを感じません。その内側の象牙質も酸に弱いのです。象牙質にまで進むと冷たいものがしみると感じます。神経まで進むと激しい痛みを感じるようになります。神経が破壊される段階まで進行すると、歯を抜かなければならなくなります。

こちらはC3まで進行したむし歯です。歯の象牙質の内側、歯髄にまで到達しています。痛みは耐え難いほどになっているでしょう。歯髄は神経や血管などがあつまっている組織です。ここまで進んでしまったら神経を抜く治療を選択しなければなりません。神経を抜く、とは、歯髄を除去するということ。痛みはなくなりますが、栄養が供給されず歯は死んでしまうのです。

その前段階、「冷たいものがしみる」と感じた時点で歯医者に行っていれば、むし歯の進行を食い止めることができるのです。

C3まで進行したむし歯

*知覚過敏

むし歯でなくても象牙質が露出して歯が痛むと感じることがあります。むし歯以外に、どんなときに歯が痛むのでしょうか。

  • 加齢により歯ぐきがさがり象牙質が露出する
    年齢を重ねると、歯ぐきがやせたり弾力が低下したりして、歯ぐきが下がってきます。歯ぐきが下がると歯の根元の象牙質が露出します。エナメル質は歯ぐきの上までしか覆っていないからです。象牙質が露出すると、痛みを感じることがあります。
  • 歯の破折
    事故などで歯が破損して象牙質がむき出しになった場合でも、痛みを感じることがあります。これは酸によってエナメル質が溶けてしまうむし歯の痛みとは原因が異なります。むし歯は進行しますが、歯の破損によって象牙質が露出する症状は進行するわけではありません。しかし、割れ目から細菌が入り込み痛みや炎症を引き起こすこともあり、放置しておくわけにはいきません。
  • 歯がすり減る
    むし歯でなくても、歯は長い間には少しづつすり減っていきます。その結果、エナメル質がなくなって象牙質が露出するということもあります。

■歯ぐきに由来する痛み

*歯周病

プラークが歯と歯肉の境にある隙間、歯周ポケットにたまったままになると、体は細菌を退治するために炎症を起こします。歯ぐきが腫れ、骨が溶けるまでに進んでしまうこともあります。しかし、歯周病はサイレントキラー(静かなる殺人者)とも言われ、重症になるまで痛みはありません。

進行してくると、歯周ポケットが深くなり歯ぐきが退縮し、歯の根の部分に冷たいものが触れると痛みを感じることがあります。さらに症状が悪化すると、膿がたまり、膿の圧力によって炎症を起こしている部分が激しく痛むようになります。ここまで進行していたらかなり重症です。歯そのものというより、歯ぐきの痛みが歯周病を原因とするものだったら、手遅れと言わざるを得ないかもしれません。初期のうちは自覚症状がないのですから、ぜひ歯科で定期的に医師のチェックを受けてください。

歯周病で歯ぐきがはれている状態

*親知らず(智歯周囲炎)

親知らずは他の永久歯と比べ、生えてくるのが遅いので、お口の中に生えてくるスペースがなく部分的に歯ぐきの中に埋まっていたり、傾いたりしたりしていることが多くあります。歯ブラシが届かず不潔な状態になりやすいため、周りの歯肉に細菌性の炎症を起こしやすいのです。親知らずは智歯とも言いますので、親知らずの周りに起こる炎症は智歯周囲炎と呼ばれています。炎症がひどいと口が開きにくくなることさえあります。

歯ぐきに埋没した親知らず

■歯以外に原因がある(非歯原性歯痛)

実は歯痛を訴えて歯科を訪れる患者さまの1割は、「歯や歯ぐきに原因がないのに歯に痛みを感じる状態」です。非歯原性疾患と呼びます。むし歯や歯周病などとは痛みがおこる仕組みが異なるため、、治療法も異なります。

  • 筋・筋膜性歯痛
    顎を動かす筋肉に痛みを生じた場合に、歯の痛みとして感じることがあります。首や肩の筋肉に関連して歯痛が生じることもあります。筋・筋膜性歯痛は、いわば筋肉痛からくる歯痛です。お口の状態に由来していないので治療も全く異なるアプローチをすることになります。筋肉のストレッチやマッサージが必要です。
  • 神経障害性歯痛
    神経の何処かに障害が生じて感じる痛みです。神経痛と呼ばれる症状です。瞬間的に刺されたような激痛が起こる「発作性神経痛」と、24時間絶え間なく焼けつくような痛みが続く「持続性神経痛」に分けられます。服薬により治療します。
  • 神経血管性歯痛
    頭痛からくる歯痛です。片頭痛や、群発頭痛の症状の一つとして歯が痛むケースで、返頭痛に関連して起こることが多く見られます。痛み方が歯髄炎と似ているので難しいところなのですが、神経血管性歯痛なら歯の治療に効果を求めることはできません。頭痛の治療が必要です。
  • 心臓性歯痛
    狭心症や心筋梗塞などの疾患に関連して歯痛が起こる報告は少なくありません。動脈解離や心膜炎から歯痛が生じる例もあります。歩行などの運動により、発作的に起こることがわかっています。早急に心疾患の治療を行う必要があります。
  • 上顎洞性歯痛
    上顎洞とは副鼻腔のひとつで、左右の上あご、主に奥歯の上にある骨の中の空洞です。この空間に生じ、歯痛につながっているのが上顎洞性歯痛 です。上顎洞に起こる炎症は、耳鼻科の領域の場合と、歯科の領域の場合があります。風邪など鼻からの影響で起きている場合は耳鼻咽喉科で治療を行います。
  • 精神疾患による歯痛
    統合失調症、うつ病において身体症状として歯痛が出現することも知られています。心理社会的要因によって生じると言われる身体表現性障害の症状として歯痛があらわれることもあります。精神科の対応が必要な疾患です。
  • 特発性歯痛
    本当に原因がわからない場合もあります。後になって原因が判明する場合もあります。

一言で歯痛といってもいろいろな理由があります。重大な病気が隠れていることもあるのです。おかしいなと思ったら放置せず受診しましょう。定期検診の習慣も大切ですよ。


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