「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が増えすぎる病気です。血糖が増えたままの状態が長く続くと、血管が傷つき、心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、さらに重い病気をひきおこします。
血液中のブドウ糖(血糖)糖尿病が増えてしまうのは、インスリンというホルモンが十分に働いてくれないことが原因です。インスリンは膵臓で作られるホルモンで、血糖を正常な範囲におさめる働きを担っています。血液中の血糖はインスリンの助けを借りて細胞にとりこまれます。インスリンの分泌量が足りなかったり、量はたりているが肥満などで細胞に糖がうまくとりこまれない状態だと、血液中に糖があふれてしまいます。
では歯周病は糖尿病にどのような関係があるのでしょうか。歯周病は、インスリンの働きを阻害します。「血糖値を正常な範囲におさめる」というからだの機能が働かなくなるのです。ちなみに正常な人のHA1c(ヘモグロビンエイチエーワンシー、過去1~2ヵ月の血糖の平均値)は5.9%以下です。6%を超えたら糖尿病予備軍です。
一方、糖尿病は免疫機能の低下や血流の悪化、唾液の減少を引き起こし、歯をとりかこむ歯周組織にも障害を起こします。そのため歯周病になりやすく、また重症化もしやすいのです。これはもう悪循環としか言いようがありません。
逆を考えてみて下さい。歯周病を治療すると、「血糖値を正常な範囲におさめる」という働きが改善されることになります。実際、歯周病治療により、HA1cが最大1%改善するという報告がされているのです。木更津きらら歯科のinstagramでこの話題をとりあげたところ、「歯周病の治療をしたら血糖値が劇的に改善されました!」とコメントくださった方がいて、とてもうれしく思いました。歯周病治療は、血糖値の正常化に貢献するんです!
歯周病や糖尿病は重大な病気をひきおこしますが、健康は毎日の習慣で守ることができるのです。悪いところのある方でも、生活習慣をあらためることで改善できる部分もあります。歯科医は、お口の健康を守ることで皆様の健康をサポートすることができます。
お口の中の様子からいろんなことがわかりますよ。歯みがきしたときに、お口の中をチェックしてみてください。次の設問のすべてに〇がつくのが理想です。×の項目があったら、早めに歯科医にご相談ください。
次にあげるのは生活習慣のセルフチェックです。すべて〇を目指して、ご自身の生活をふりかってみてください。
なかでも歯周病は再発しやすく、自覚症状がないため、知らないうちに進行してしまいます。徹底したクリーニングと正しい歯みがきで、予防が可能になり、初期のうちに進行を食い止めることができるのす。
まず歯周ポケットの深さを調べます。歯と歯ぐきのあいだにあるすきまが、歯周ポケットです。プローブという針状の器具を使って深さを探るため、プロービング検査と呼ばれます。また歯を支えている骨の状態をレントゲンで調べることもあります。
歯周ポケットの深さがわかったら必要なメインテナンスを決定します。健康な歯と歯ぐきなら、歯周ポケットは1~2 mm程度です。深さが3 mm程度だと歯肉炎を起こしている可能性があります。きれいにおそうじして正しい歯みがきをすることで回復します。
歯と歯のあいだや、歯と歯肉のあいだにたまった汚れは、放置しておくと歯石となり、歯周病菌の温床となります。初期の歯周病はプロによるクリーニングと正しい歯みがきを続けることで、改善されることが多いのです。また歯の表面がなめらかになり歯垢がつきにくくなることは歯周病菌の繁殖をふせぎ予防に効果的です。
Professional Mechanical Tooth Cleaning の略です。その名のとおりプロの歯科衛生士による歯のおそうじです。日々の歯みがきで落としきれず、歯と歯肉のあいだや歯の根の部分に残ってしまった汚れを、振動するプラスチックやゴム製の器具でおそうじし、フッ化物入りペーストを使用して、きれいに磨いていきます。歯石を取る治療とは異なり、エステのような感覚の気持ちよい刺激で、眠ってしまう方もいらっしゃるほどです。
歯周ポケットが4~5mm程度まで深くなると危険信号です。6mm以上になると、重度の進行した歯周病で、歯を支えている骨が溶けていることもあります。歯周病治療の基本は徹底した歯のおそうじと歯みがきです。重度に進行した歯周病では、歯と歯ぐきのあいだに細菌のかたまりである歯石ががんこに付着していることがあります。その場合は歯ぐきを切り開いてクリーニングする外科的な処置も検討します。
歯はものを食べるときに、食べ物を細かくかみ砕いて消化しやすくしてくれます。前歯は食べ物を噛みきり、先のとがった犬歯は食べ物を切り裂き、奥歯は食べ物をすりつぶします。こうして砕かれた食べ物は飲み込みやすくなり消化もたやすくなります。天然のミキサーを誰もが持っているんです。
ミキサーにはお手入れが必要です。食べ物を噛み砕いた後の歯のまわりには、食べ物のカスがくっついています。歯の表面や、歯と歯の間だけでなく、歯と歯ぐきの間にも残ってしまいます。そのままにしておくと、食後8時間ほどでむし歯菌(ミュータンス菌)がねばねばした物質を作り始め、膜のようにはりつきます。ここは温度も最適で食べ物もあり、細菌が繁殖しやすい住処となってしまいます。
これが、歯垢(プラーク)で、バイオフィルムともいいます。プラークは水にとけにくく、うがいなどでは落ちないため、歯ブラシや歯間ブラシ、フロスでしっかりおそうじしないととりのぞくことができません。
プラークには、たくさんの種類の細菌が住み着きます。わずか1/1000gのプラークに、1億個以上の善玉菌と悪玉菌が生息します。プラークが除去されず、時間がたつほど、悪玉菌が増えてしまいます。
代表的な悪玉菌が歯周病菌です。歯周病菌は歯ぐきの炎症を起こし、出血や膿の原因となり、歯の周りの骨を溶かす作用ももっています。しかも、プラークは、唾液や薬の抗菌成分にも抵抗力が強く、化膿止めといった薬も効きにくいのです。
通常、中性であるお口の中は、食べたり飲んだりしたあとは酸性に傾き、歯のカルシウムを溶かしはじめます。これを「脱灰」と言います。少しのことなら、唾液の助けなどにより歯は自然に修復します。これを「再石灰化」と言います。ところが、プラークが除去されないまま長時間たつと、再石灰化がまにあわず、歯に穴があくほどに進んでしまうことがあります。これがむし歯です。
さて、除去されなかったプラークはどうなるのでしょうか。プラークは、唾液や血液の中のカルシウムやリンと結びついて灰白色、黒褐色の石灰化した堅いかたまりとなり、歯と歯の間や歯と歯ぐきの間に張り付きます。これが歯石です。
プラークや歯石は悪玉菌、特に歯周病菌の住処となり、炎症などのトラブルを起こします。歯周病は放っておくとどんどん進行します。痛みがないからといって放置していると、抜歯しなければならないほど歯や歯ぐきが痛んだり、歯周病菌が血液中にまわって重大な病気につながったりします。
その中で、歯科クリニックが感染症が流行する中でたいへん厳しく徹底的に予防対策をしていることはあらためて知っていただけたのではないでしょうか。
歯科クリニックでは患者さまを守るだけでなく、歯科スタッフのことも感染症から守らなくてはなりません。そのため、従来からB型肝炎やHIVなど感染対策には力を入れており、ノウハウも確率されています。コロナ禍においてもいちはやく「歯科診療のガイドライン」を策定して対応しています。
2021年6月のことですが、大阪府の吉村府知事が、歯科医院のクラスター発生が報告されていないことをTwitterで発信されていました。大阪だけではなく、これは全国的にも言われていることなんです。
通院途中の方、お口の中の健康状態に気になることがある方は安心してご来院いいただけます。治療の中断をなさいませんように、ご心配なことがあればいつでもご相談ください。
何度も繰り返しお伝えしたいのは、「歯周病」のリスクです。
歯周病は日本人の8割がかかっていると言われるほど身近な病気ですが、身体全体に影響がおよぶほど重大な病気であることはご存じでしょうか。口腔内の細菌は、血液にのって循環器、呼吸器、消化器へと広がり、慢性の炎症を起こします。この状態は、感染症ウイルスが蔓延しているような緊急事態では、免疫暴走や細菌性肺炎、重大な臓器障害を起こすリスクを高くしてしまうのです。
歯周病を治療することは、感染症に負けないからだ作りにもとても大切なのです。
また新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス(SARS-CoV-2)は、インフルエンザと同じ、付着様式で感染することがわかっています。ウイルスが付着した手や唾液を介して、からだの粘膜に付着し、感染していくのですね。
風邪やインフルエンザにおいては、歯周病菌がウイルスの付着を助けていることは明らかにされています。歯周病原因菌をお口の中から減らすことができれば、付着を防げることがわかっているのです。ということは、新型コロナウイルス感染症でも、歯周病を治療し口腔内を健康に清潔に保つことによって、付着を防げる可能性が高いのです。
歯科医療の立場からは、口腔ケアが、患者さまの全身の健康を守り感染症対策のサポートになると考えております。
Suzuki先生はアメリカの大学で臨床教授を務められている方で、10月2日から3日にかけて札幌で開催された、iACD(国際コンテンポラリー歯科学会)日本支部の学会で講演をされたのです。
理事長中谷が学会に参加し、お話を聞いてきました。中谷はiACD日本支部の役員を務めております。
わからないことが多かったコロナウイルス感染症ですが、少しづつ明らかになっていることもありますね。歯科の立場からは、正しい口腔ケア、定期健診をおすすめいたします。
歯周病は本当にこわい病気です。歯と歯ぐきの間にたまってしまう歯垢は細菌のかたまりです。これが歯ぐきの炎症を起こし、歯を支える骨を溶かし、血管にはいった歯周病菌は血管の慢性的な炎症を起こすのです。
そのうえ、歯周病菌は、動脈硬化、脳疾患、糖尿病、高血圧、肺炎、早産などの危険因子となることがわかってきたのです。歯周病の症状は、歯ぐきをいためて歯が抜けてしまう、というだけではないんですね。
対策としては、歯周病菌を除去すればいいのですが、これがなかなか簡単ではありません。細菌がくっつきあってネバネバしたかたまりとなっているため、簡単には取り除けないのです。
歯の質や歯並び、お口の中の状態は人それぞれ。こんな方はご注意ください。
ではどうすれば歯周病菌を除去し、歯周病を予防できるでしょうか。
木更津きらら歯科では、鶴見大学の研究チームが開発した「3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)」という予防システムをとりいれています。
マウスピースに殺菌作用のある薬剤を注入して、一日5分、お口に装着するというもので、薬剤が歯と歯茎にとどまり、効果的に除菌できます。
当院では、注入する薬剤として、高い殺菌力とフッ素配合が特徴のコンクールジェルを採用しました。効果的、かつ徹底的にむし歯菌や歯周病菌を殺菌、歯の再石灰化も促進します。
定期的なメンテンナンスと一緒に行う事で、むし歯や歯周病のない健康なお口を手に入れることができます。全身の健康づくりにも役立てることができます。
鶴見大学歯学部の花田教授によると・・・歯周病の前段階の歯肉炎に対して、3DSを6週間続けた結果、
また血圧が下がり、服用していた降圧剤がいらなくなった人も報告されているということです。
米国の大規模な調査で、6,736人に歯周ポケット検査を行った結果です。歯周病の重症度が進んでいるほど、虚血性脳卒中のリスクが、2倍~3倍、高くなることが明らかになりました。
歯周病は、心血管疾患の重要なファクターであり、世界的に、公衆衛生の重要な課題です。それを示す調査結果が、各国で続々と発表されています。今回の調査は、米国人約1万5,000人を15年間追跡した大規模観察研究の付随調査です。白人と黒人が大勢をしめる米国では初めてのこととなります。台湾では、すでに歯周病と虚血性脳卒中が関連していること、歯周病の予防や治療が脳卒中のリスクを低下させることが明らかになっています。
脳の血管がつまる脳卒中
「虚血」は「血がない状態」という意味で、脳血管の血の流れが阻まれ、脳の機能に障害が起こる病気です。運動麻痺、嚥下障害、感覚麻痺、言語障害、意識障害等といった症状が現れ、死に至るケースもあります。
虚血性脳卒中のうち、発生率の高いものは、心原性脳塞栓と血栓性脳梗塞と認められました。
心原性脳塞栓は、心臓にできた血栓が血液の流れにのって脳へ到達し、脳の太い血管がつまってしまう病気です。血栓性脳梗塞では、もともと太い血管が動脈硬化で狭くなり、そこへ血栓ができて血管が詰まってしまいます。
今回の調査では、定期的な歯科の受診をした人たち6,670人は、不定期な受診しかしていない人3,692人に比べて、15年の間に脳卒中のリスクが23%低下しています。歯周病は、全身の様々な疾患に関係あることが明らかになってきていますが、またひとつ、大規模な調査結果によって裏付けられたことになります。
初期の歯周病は痛みがなく自分ではわかりません。進行してしまってからでは、とけてしまった歯槽骨はもとにはもどらないのです。
平成29年6月、厚生労働省が平成28年の人口動態について発表しました。それによると、日本人の死亡原因は、1位が悪性新生物(がん)、続いて2位が心疾患となっています。3位の肺炎に続き、脳血管疾患が4位。実は、心疾患と脳血管疾患は、歯周病ととても関係が深いのです。
歯がない人、自分の歯が少ない人は、心血管疾患・脳卒中のリスクが高くなることがわかってきました。各国の調査をご紹介します。
スウェーデン
スウェーデン・ウプサラ大学医療科学科のグループが2015年12月に発表した調査では、歯が全くない人は、歯が26~32本ある人に比べて、心血管疾患による死亡のリスクが1.85倍、脳卒中による死亡のリスク1.67倍という結果がでました。他の死因についても、死亡リスクは1.81倍となるそうです。39カ国、1万5456人を対象とした調査です。
アメリカ
アメリカでは、失った歯の数に比例して、脳卒中のリスクが高まるという調査結果がでています。2010年、41万人を対象に電話調査をしたところ、1~5本の歯を失った場合、脳卒中にかかる危険性は1.29倍に高まり、6本以上の歯を失った場合は 1.68倍、全ての歯を失ってしまっや場合は1.86倍にもなるそうです。
イギリス
イギリスでは、2012年に1万2871人の健康記録を調査したところ、やはり歯をすべて失った人は、すべて自分の歯で生活できている人に比べて、心血管疾患による死亡率が高いことが明らかになりました。脳卒中の死亡リスクは3倍ともなっています。
歯周病は、日本人の80%がかかっていると言われており、歯を失ってしまう原因としてもトップです。そればかりか、歯周病菌は血管にはいると血管内にプラークをつくり、血液の通り道を補足してしまいます。また血管内のプラークは、はがれおちて脳や血管を詰まらせる原因となるのです。
死に至るほどの重い病気は、歯の状態と深く関係しているのです。日本人は、40歳までは自分の歯で生活しています。40歳以降に、急激に歯を失っていくのです。