「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
糖質は動物にとって重要なエネルギー源です。それは人間も同じです。糖質は炭水化物から多く摂取することができます。炭水化物は、たんぱく質、脂質とともに「エネルギー産生栄養素」と言われています。糖質は、私たちの日々の活動を支える重要な栄養素でもあるのです。
では糖質が、むし歯の原因になってしまうのはなぜなのでしょうか。
むし歯になる原因としては3つの大きな要素があります。
むし歯菌(ミュータンス菌)はほとんどの人のお口の中にいる、1/1000mmの球状の菌の塊です。むし歯菌は糖分を餌にして増殖し、菌の周辺にグルカンというねばねばしたノリのような物質を吐き出します。これが、歯の表面にとりつく歯垢(プラーク)の正体です。同時にむし歯菌は糖質から酸を作り出します。その酸が、歯の表面を形成しているエナメル質を溶かし、ついには穴があいて、むし歯となってしまうのです。
糖質は、むし歯菌が酸を作る餌となります。特に糖質の結晶である砂糖はだらだらととりすぎるのはよくありません。だらだらとお菓子を食べたり甘いキャンディーや飲料水をよくとる習慣のある人は、歯の表面が酸にさらされる時間が長くなり、むし歯になりやすい状態になってしまいます。糖質は人間の活動には不可欠なものであり、もちろん甘味料の砂糖だけではなく炭水化物などにも含まれています。問題は過剰な摂取と、そのとりかたなんです。
体質によりむし歯になりやすい人というのはいらっしゃいます。歯のエナメル質や象牙質の状況がむし歯になりやすいケースです。特に乳歯や永久歯が成長過程のお子さんは注意が必要です。
糖質は人間の活動のために必要な栄養素ですが、とりすぎはよくありません。口の中が酸性に傾いているとむし歯の原因にもなります。ではどれくらいなら適切な摂取量といえるのでしょうか。
世界保健機関(WHO)が2015年に発表したガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」では、成人及び児童の1日当たり遊離糖類摂取量を、エネルギー総摂取量の10%未満に減らすことを推奨しています。。また5%まで減らして、1日25g(4gの角砂糖6個ほど)程度に抑えるなら、更に健康効果は増大するとしています。
ここで普段私たちがよく口にする飲料にどれくらい糖質が含まれているか考えてみましょう。写真は、2021年12月の木更津市1歳児半検診でご紹介したものです。市販の飲料に含まれる炭水化物を角砂糖におきかえると、4個から10個以上含まれています。口あたりのいい飲み物には意外と多くの砂糖が含まれていることに驚きます。