「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
自然なお口の匂いは誰にでもあります。それが他人に届くほど強かったり、不快に感じるような臭いだったりしたら、なにか原因があるのかもしれません。きちんと治療して、さわやかな息をとりもどしましょう。
では口臭の原因としてはどんなものがあるのでしょうか。
一番可能性が高いのは歯周病です。歯周病による口臭は、ドブくさかったり生ごみのような臭いで、まわりの人から嫌がられるくらい強烈です。歯周病と口臭は非常に強い関係があります。口臭の原因となるのは揮発性硫黄化合物、硫化水素やメチルメルカプタン。歯周病の原因菌は、硫化水素よりさらに悪臭のするメチルメルカプタンを大量に発生させるんです。
歯周病の特徴は歯周ポケットが深くなること。歯と歯ぐきが健康的に密着しておらず、すきまができた状態を歯周ポケットと言いますが、そこが細菌の住処となってしまうのです。歯周病菌のほとんどは嫌気性菌といって、酸素が少ない場所で増殖するのです。歯周ポケットが深いと歯周病菌が繁殖して、歯肉は破壊され、ますます歯周病は進行します。
歯や歯ぐきの周りにこびりついたプラークも、口臭の原因となる細菌の住処となっています。清潔にお手入れされていない入れ歯や、時間のたった金属の詰め物や被せものも口臭の原因となります。
お口の中に原因が認められず、独特の口臭から体の病気が疑われる場合には、速やかに専門の医療機関をご紹介します。口臭をガス分析して原因を特定できるお近くの医科をご紹介することもできます。
お酒や、ニンニク、タバコなど、飲み物や食べ物、嗜好品のうち匂いが残るタイプは、口臭として感じられることもあります。こちらは、時間の経過とともに次第に治まっていきます。また、歯磨きや口臭ケアグッズの使用で軽減できます。
人間身体の生理として、自然に生じる口臭もあります。起床時や、空腹なとき、緊張したときなどに、口臭が強くなったと感じることはありませんか? これは誰にでも起こる生理的な自然な口臭です。こちらは時間の経過や状況の改善によって治まります。
口臭と一言で言っても、こんなにいろんな原因があるんですよ。自然な口臭を必要以上に気に病む必要はありません。コロナ禍においてマスク生活が定着したせいで、自分の口臭が気になり始めた方もいらっしゃったようです。しかし、不快なほどの口臭がありましたら、思い切ってご来院いただくことをおすすめします。
では気になる口臭を自分でチェックしてみましょう。
口臭はむし歯や歯周病など、重大な病気につながるサインでもあるのです。口臭は原因を治療し、正しいセルフケアで改善できます。ご自身の健康のため、気持ちのいいコミュニケーションのために、放置しないできちんと治療しましょう。
歯科で行う口臭治療は、むし歯予防、歯周病治療や予防の考え方と同様のものになります。むし歯の原因となるプラークや、そこに巣くった歯周病菌が口臭の原因となるのです。プラークを除去し、歯肉がひきしまってプラークがつきにくくなることで、口臭の元となるメチルメルカプタンの発生を抑制することができます。
まずはプロによる歯のお掃除「PMTC」(Professional Mechanical Tooth Cleaning)をお勧めします。歯科衛生士が、専用の機器を使って歯ブラシの届かない歯周ポケットの中まできれいにクリーニングします。歯周病予防であると同時に、口臭の改善にもつながります。定期的にPMTCを行うことで、歯肉がひきしまりプラークや歯石がつきにくくなります。
歯周病予防と同じ考え方で口臭予防にも役立ちます。歯並びは人によって異なります。プラークや歯石はつきやすいところに歯ブラシが届いているか、ごいっしょに確認しましょう。食べかすがきちんととりのぞかれることが、口臭予防にもつながるのです。
むし歯を治療したところや、入れ歯をきちんとメインテナンスすることも大切です。金属の詰め物や被せものは、時がたつにつれずれたり破損したりします。そこにプラークがたまりやすいのです。セラミック素材なら細菌がつきにくくおすすめです。また入れ歯も毎日洗って清潔な状態で使用しましょう。お手入れについてお伝えし、必要に応じて調整、修理や作り変えを提案させていただくこともできます。
歯みがきや歯間ブラシ、デンタルフロスを使って起床後、食後、就寝前に丁寧にケアをしてあげてください。起床したときにはお口の中は細菌が繁殖している状態です。眠っているときは、自浄作用のある唾液の分泌量が低下するからです。朝起きたとき口臭を強く感じるのはそのためです。起床したときに感じる口臭は、起床してすぐのセルフケアで軽減できます。マウスウォッシュや舌ブラシも効果があります。
また口の中が乾くと細菌が繁殖しやすくなります。しっかりと噛んで唾液の分泌をうながしてあげること、こまめに水分補給をしてお口の中がさわやかにうるおっている状態をおぼえてください。