「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
歯の神経のことを「歯髄(しずい)」と言います。「歯髄」は、歯の中核です。歯髄には神経だけでなく、たくさんの血管も通っています。歯髄の血管は、歯を形作る象牙質に栄養を送ったり、免疫細胞を作ったりする役割を担っています。
むし歯がC3 以上にまで進行し、この歯髄まで侵されている場合や、歯の根が病気になった場合には、神経を抜く治療、「根管治療」を選択しなければならないことがあります。根管治療は、歯の治療のうちでもとても大きな割合を占める治療なんです。
簡単に言うと、細菌に感染した歯や神経を徹底的に殺菌して除去し、清掃・消毒して、空になった管の部分に防腐剤を詰めて密閉するというものです。そうすることで、それ以上の感染をストップさせ、歯の機能を維持させるというものです。
むし歯治療で神経(歯髄)を抜いてしまうということは、栄養の供給がストップし、免疫機能が働かなくなることを意味します。歯は再生能力を失い、もろく、欠けたり折れたりといったことが起こりやすくなります。
ですから、そこまで進行してしまう前に、早く気づいて治療しましょう! 神経を抜かなければならなくなる前に治療できたらいいのですが・・・ でもそこまでむし歯が進行してしまったら、放置しておくのはもっとよくありません。
では、むし歯の菌に感染した神経、根管はどのような状態にあるのでしょうか。根の先に膿は溜まっている状態では、痛みが出ないこともあります。これを慢性期といいます。治療を始めて感染源を取り除くと激しい痛みや腫れが現われる場合があります。これを急性期といいます。
慢性期では、普段は痛くないが、体調が悪いようなときに鈍痛が生じます。疲れているときや発熱しているときに痛みが起こるのですね。また歯肉(しにく)を押したり、なにか咬んだときにと違和感を感じることがあります。走ったり階段を駆け降りたりしたときに、上の奥歯が痛むことはありませんか? 歯肉に小さな穴があり、膿が出ていませんか? 歯肉が腫れたり、潰れたりを繰り返していませんか? これは根管が感染したときの症状なんです。
急性期は、食べたり飲んだり、運動をしたりといった刺激がなくても、ズキズキと激しい痛みが起こる状態です。激しい痛みは、痛み止めが効かず、眠れないほどです。歯肉が腫れてきて、上の歯であれば目の下まで、下の歯であれば首のあたりまで腫れてきます。喉も腫れてくることがあります。微熱や倦怠感が現われることもあります。
むし歯が歯の奥深くまで進行し、神経(歯髄組織))までむし歯の原因菌に感染し、炎症がおさまらず回復しない場合は、もはや歯髄を保存することはできません。できる治療は、感染した歯髄をとりのぞき、歯髄組織が入っている管 (根管)をできるだけ無菌状態にして、封鎖してしまいます。これは細心の注意が必要な治療です。根管治療を行ったにもかかわらず、再び根管が感染してしまったり感染が残っていたりする場合もあるのです。その場合は再度、根管治療が必要となります。
症状は冷たいものや温かいものがしみる、じっとしていても鈍い痛みを感じることがあるなどです。
歯髄炎がさらに進行して、神経や血管などが入ってくる管(根尖孔)から、歯根の周囲の組織に細菌の感染が広がり、病巣が広がっている状態を、根尖性歯周炎といいます。
歯根の先端に炎症が起きて膿がたまってしまいます。歯を支える骨の部分、歯槽骨の内部に膿がたまり、破壊されて溶けていくため、激しい痛みが生じ、歯肉や顎が腫れたりします。この膿が、歯肉や皮膚ににできた穴から口の中に出てくることもあります。
むし歯を放置して根尖性歯周炎にまで進行することもありますが、むしろ一度根管治療を行った歯が、再度感染を起こし、根尖性歯周炎となるケースが多く見られます。
症状としては、「噛むと痛い」「歯ぐきから膿が出る」「たまに強い痛みがおそってくる」といったことがあげられます。
歯髄の組織や細胞が死んでしまい、冷たいものを飲んでも痛みを感じなくなります。この状態を「歯髄壊死」と言います。痛くなくなったからと安心してはいけません。歯の色も変わってきます。怪我や事故などの外傷により脱した歯が歯髄壊死となることもあります。
さらに放置を続けると、歯髄がおさめられている管に停滞する細菌によって、壊死した歯髄が腐敗してしまい、「歯髄壊疽(えそ)」の状態になります。強い腐敗臭や口臭がするよういになります。
根管治療、神経を抜く治療という治療法は、細菌に侵された部分を取り除き除菌して無菌状態にしたうえで、薬を詰め、封印することとお話しました。大切なことは、根管内にいる細菌をできるだけ消毒すること、新たに根管内に細菌を侵入させないことです。
歯の根は、人それぞれ形が違い、複雑な構造になっているため、細菌を完全に取り除くことは非常に困難です。根管治療はじっくり時間をかけて丁寧な処置を行う必要があります。
細菌を残した状態で詰め物や彼せ物をしてしまうと、根の中で細菌が増殖して症状が再発してしまうかもしれません。その場合には、抜歯・歯根端の切除など、外科的な処置が必要となります。再発を防ぐために、初回の根管治療で適切な治療を受ける事が重要です。
木更津きらら歯科では歯科用 高精度手術用顕微鏡 マイクロスコープ「Bright Vision」を導入しています。拡大された視野で治療することにより、より精密に感染源を除去することができます。だた顕微鏡を使用すると、いろいろわかりすぎて、通常の保険診療で想定されている状況にあてはめることができないほど、治療の範囲が広くなる傾向はあります。一部保険適用できるケースもございますので、必要に応じて、より高い精度での診療をご提供することが可能です。
根管治療は治療後が重要です。根管治療を施した歯がしっかり機能しているかどうか、再発していないかどうか、定期的に確認します。