「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
顎が成長過程のうちに矯正治療を始めるにはよい点があります。正しい顎の成長をうながし、大人になってできあがった顎の形を変えようとするよりずっと負担が少なくて済みます。歯列が整えば、将来にわたって抜歯をしなければならなくなる可能性が低くなります。正しい咬み合わせが実現できていれば、食べること、よく噛むことがうまくできるようになり、全身の健康にもよい影響を与えます。矯正が必要なら早めに治療することがお子さまへの贈り物なんです。
子どもの歯並びは将来的な歯並びにも影響をおよぼします。また全身の健康にも関わってきます。乱れた歯並びを放置しておくことによる悪影響について知っていただきたいと思います。
矯正の検討が必要な歯並びについて詳しくは こちら
乱れた歯並びは歯ブラシの毛先が届きにくく、むし歯や歯周病にかかりやすくなるのです。子どものむし歯とあなどってはいけません。一度むし歯になった歯はもとにはもどりません。若いうちに自分の歯を失ったり、入れ歯やインプラントなど人工の歯の助けを借りなければならなくなる可能性があります。また進行すれば顎の骨を損なう歯周病も、子供だから無縁ということはないのです。
お口のまわりの筋肉や顎の発育がアンバランスだったり、歯の位置が異常だったすると、発音に支障をきたすことがあります。空気がもれたり、舌が正常な位置におさまらないといったことが起こる可能性があります。たくさんお話できないと、心にも影響が出てくるかもしれません。
歯並びは顎の骨や関節とつながっています。乱れた歯並びは顎の関節に負担がかかってしまいます。顎関節症は、顎の関節や顎を動かす筋肉が痛んで、大きく口を開けられなくなる症状を言います。
顎の関節に負担がかかる状態が慢性的に続くと、首の筋肉が緊張し、慢性的な肩こりや頭痛の原因となる場合があります。集中力を損ない、勉強などの生活にも悪い影響がでてきてしまいます。
人と違った歯並びはコンプレックスの原因になることがあります。自分の見た目にストレスを感じてしまうと、自分を表現することに消極的になってしまいかねません。
子どもの頃の歯並びは、将来の健康や心にも関係があります。ご心配なことがあったら、ぜひ医師に相談してください。
実はお子さまの歯並びの悪くなる原因は、もともとの先天的な問題のほかに、「癖・生活習慣」によるものが7割程度を占めています。子どもの歯列矯正には、癖を治し歯列を整える方法と、顎の発育を矯正する方法があります。
弱い力であっても歯に継続的に力がかかっていると、歯は動いていきます。頬杖や、舌で前歯を押したり、舌を突き出したり指しゃぶりいった癖が、歯を動かしていくのです。子どもの歯並びは大人より簡単に動いていきます。逆に、癖を改めれば歯並びが整うことも、大人よりは容易です。歯並びを悪くする癖を改善する方法が、口腔筋機能療法(MFT)です。
口腔筋機能療法(MFT)では、さまざまなトレーニングがあり、お子さまのお口の状態に応じてお口の体操のプログラムを作成します。1日2分ほどのトレーニングを毎日コツコツ続けてください。2年ほどで筋力が鍛えられ歯並びが整ってくることが多いようです。お子さまにも保護者の方にも根気のいる作業ですが、ごいっしょにがんばりましょう。歯科医院では月に1度ほど、15分ほどのトレーニングを行います。
歯並びの乱れの原因になりやすい癖をなおし、お口の周りの筋肉を整え、永久歯が生え並ぶ土台を作るサポートをするのが機能的マウスピース型矯正装置です。歯並びだけでなく、歯列の土台となる筋肉のバランスをバランスよく整えることが目的です。先天的な歯並びの特徴があっても、永久歯の生えるスペースをあけるなどの対処をしておくことで、きれいな歯並びへと導いていきます。口元が引き締まる、治療終了後の後戻りのリスクが低いことが特徴です。
機能的マウスピース矯正装置「プレオルソ」は症例にあわせたいくつかのタイプ、サイズがあり、あたためてフォームを調整します。日中の1時間と、就寝するときに装着します。学校ではつける必要はありません。およそ1年ごとに新しいマウスピースに交換します。
乳歯と永久歯が混在している時期の矯正は、将来の大人の歯並びの土台を整えることが目的です。歯の大きさに対して、顎の骨が小さくて歯並びが凸凹になっている場合には、土台分の発育を適切に導く床矯正(しょうきょうせい)を選択します。顎の発育を、永久歯の歯列が適切に並ぶように、段階的に歯列の幅を広げていいきます。顎の発育を導くために、マウスピースの幅を少しづつ広げていきます。
床矯正の装置は、とりはずすことができます。その特徴にはメリットもデメリットもあります。
装置をとりはずすことができるのが一番の特徴です。ブラケットやワイヤーをとりつける矯正方法より、歯みがきが容易でむし歯のリスクが低くなります。磨き残しがなく、むし歯にならないというのは、将来のことを考えても本当に重要なんですよ。また食事の際にとりはずせるので、食事のメニューが限定する必要がないのも、成長期のお子さまにとっては大切なことですね。
装置をとりはずせるという特徴は、デメリットの面もあります。頻繁に矯正装置を外していると、治療期間が長引くかもしれません。顎の成長にはお口のまわりの筋肉の癖・習慣が関係しています。そのため、治療が終了し、装置を取り外すと後戻りする可能性はあります。
床矯正は、永久歯と乳歯が混在している時期、前歯4本が永久歯に生えそろっている時期に始めることができます。一般的には、5~7歳までのお子さまに適しています。歯のすべてが永久歯へと生え変わっている時期には難しいかもしれません。お子さまの矯正にはメリットが多数ありますが、治療にとりかかれる時期が限定されるのです。前もって検討し、タイミングを計る必要があります。ぜひ早いうちに、医師にご相談ください。