「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
乳歯のさらに奥に、新しく生えてくる永久歯は、大人になってもずっとおつきあいすることになる大事な歯です。生え変わることはありません。これを第一大臼歯といいます。
第一大臼歯は乳歯から永久歯への生え変わりの軸となる重要な歯で、永久歯の中で最も大きく、最も噛む力の大きな歯です。歯並びや咬み合せの中心ともなります。一生おつきあいしていく歯が6歳の頃に生えてくるんですね。6歳ごろに生えてくるので、6歳臼歯と呼ばれています。早い子では、4歳半ころから生え始め、6歳のお子さまの約半数が生えています。
歯は唾液の中のカルシウムなどを吸収して徐々に強くなっていきます。しかし、生えたばかりの歯の表面は未完成で弱いため虫歯の進行も早いのです。
6歳臼歯は、生えるスピードがゆっくりなので、乳歯より一段低いため、歯ブラシが届きにくいのです。また乳歯にくらべて噛み合わせの面の凹凸が大きく、磨き残してしまうことがおこりがちです。
生えてきたばかりのこの奥歯は、噛める高さになるまでは 1 年程かかります。生えたての歯は歯質が未熟なため2~4年間が最もむし歯になりやすい時期になります。
この溝の部分埋める処置(シーラント)をするとかなりの確率でむし歯を予防することができます。
新しく生えてきた大人の歯、6歳臼歯は、生えて間もない時期には石灰化が不十分で歯自体が柔らかかったり、高さがそろわず歯みがきがしにくい特徴があります。また6歳臼歯には乳歯にはない深い溝があります。ここは食べかすや菌がたまりやすく、歯ブラシが届かないとむし歯になってしまうのです。
シーラント処置は、虫歯になりやすい奥歯の溝を、接着力のあるプラスチックの樹脂で埋めてしまう方法です。シーラントの中にはフッ素が入っていて、徐々に歯の中に浸透する様な仕組みになっています。シーラントは歯を削る治療ではないため、痛みがありません。フッ素塗布と並んで、お子さまのむし歯予防に選択されることの多い方法です。
エッチングという酸処理を行います。リン酸という酸でエナメル質や象牙質をざらざらにして、歯質の表面にシーラント剤をしっかりと接着させることが目的です。
歯を削るの!? とびっくりされてしまうかもしれませんが、数時間から数日で、再石灰化により回復できる範囲の処置ですのでご安心ください。
細いノズルを使用して、シーラント剤を慎重に塗布していきます。
足りなくてもいけませんが、溝の外にあふれてしまうようでは噛んだときに咬み合わせがおかしくなるので、多すぎてもいけません。あふれてしまった場合は固まる前にしっかりふき取ります。
シーラント剤を塗布したらすぐに、光照射を行いシーラントを硬化させます。光を当てたあとは、短い針のような器具を使ってシーラントがしっかり固まっているかチェックをします。
しっかりついていなかったり、はがれてしまっていたら、再度シーラントを塗布して光を照射します。またシーラント剤が多すぎたりした場合は、ていねいに削り落として調整します。
これでシーラント処置は完了です!
言葉でご説明するとたいへんなことのようですが、むし歯の治療のように歯を削るわけではないので痛みもなく、お子さまでも負担にならない短時間で処置は完了いたします。
歯の溝が滑らかになり、歯垢や食べ物がつきにくくなり、歯磨きが容易にできるようになります。溝に食べかすなどが付着するのを防ぐことで、むし歯の発生を予防できます。むし歯の発生率を60%程度まで減少させてくれると報告されています。
またシーラントにはフッ素が含まれているため、歯の表面を強化してくれる効果もあります。
シーラントは、破損などがなければ数年は持つことが多いです。しかし、シーラントそのものは強固なわけではないので、奥歯で硬い物を噛んだ時に割れてしまうこともあります。シーラントが取れてしまった場合は放置しないで、すぐに新しいシーラント処置をさせていただきたいです。中途半端に残っていると反対に虫歯になりやすくなることがあるからです。
シーラント処置は保険の範囲内で行える予防処置です。乳歯にも適用できます。
お子さまの口腔内の状態によって、シーラントをすすめしたい場合も、必要がない場合もありますが、時期としては、歯が生えてきた頃に処置をするのをご検討ください。
乳歯が生えてくる3~4歳頃、今回ご紹介した6歳臼歯、奥歯の永久歯が生えてくる5~6歳頃、むし歯になりやすい12歳臼歯が生えてくる12歳頃を目安としてみてください。
一生つきあう永久歯が生えてきたころには、積極的な予防をおすすめします。むし歯が進行してしまうと、歯を削ることになってしまうことがほとんどです。シーラント処置で、お子さまのまだやわらかい歯をむし歯から守ることができます。
ただ注意していただきたいのは、シーラントをしたからといって虫歯にならないわけではないという点です。シーラントをしても、毎日のブラッシングは、とても重要です。お子さまの歯みがきの仕上げ磨きや、きちんと歯ブラシの毛先が奥歯まで届いているか、見てあげてくださいね。
また、定期検診を受けることを習慣としていただきたいのです。シーラントした部分の歯の表面は見えにくく、むし歯になってしまうと見た目だけでは気づかず、むし歯が進行してしまうということもあり得るのです。
シーラント治療は樹脂を流して固めているだけなので、通常の詰め物より取れやすくなっています。粘着性の高いガムやキャラメルを食べた際や、強く噛んだり、歯ぎしりでも外れてしまう事があります。その場合は、あらためてシーラント処置をすることをおすすめします。中途半端にとれてしまうと、その隙間に食べかすがつきやすくくなりむし歯の原因になってしまうかもしれませんから。