「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
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嚢胞とは体の中に発生した袋状の病変で、顎の骨の中にもできます。親知らずなど、顎の骨の中に埋まったままの歯の周りによく見られます。袋の中には液体や半液体状の内容物が貯まっていて、痛みはありません。症状がない場合はレントゲン検査などで偶然発見されることが多いのですが、痛みと腫れといった症状がある場合は感染しており、さらに重大な症状を引き起こすことになります。
嚢胞が形成され、大きくなってくると、顎の骨や周囲の組織に圧力がかかり、顎や歯に痛みが生じます。顔の外側まで腫れることもあります。
嚢胞が感染すると、痛みや腫れは急激に悪化します。膿の排出や発熱がおこり、周りの骨が溶けていくことで顎の形が変化し、嚢胞が神経を圧迫して、下唇やあごの部分の感覚に異常をきたすかもしれません。痛み、腫れなどの症状がある場合は、さらに深刻な状態に発展する危険があり、早急に治療を受ける必要があります。
X線、CTスキャン撮影の画像診断で嚢胞の正確な位置や大きさを特定し、嚢胞が周囲の骨や歯に与える影響を確認します。また歯の治療歴や外傷、や副鼻腔炎の治療歴なども詳細に確認します。そのうえで、治療計画をたてていきます。
嚢胞が大きい場合には、腫瘍の発生がないか、採取した病変部位の一部を顕微鏡で詳細に観察する病理検査を行います。CTなどの画像から骨の破壊がわかった場合は、悪性であることも考えられるため、口腔外科としても精査していきます。
全身麻酔下で嚢胞すべてを摘出する方法をとります。原因となった歯が歯肉に埋没した親知らずの場合は抜歯を同時に行います。嚢胞が大きい場合には、入院して全身麻酔のうえ手術を行うこともあります。
親知らずは生えてくるときに、歯肉を突き破って出てきます。歯肉や隣の歯を押すこともあります。親知らずがまっすぐ生えてくれば痛みは治まりますが、斜めや横向きといったおかしな方向を向いていると痛みが続くことがあります。
少し頭をだした親知らず。斜め横向きに生えていることも多く、歯ブラシが届きません。そのため、むし歯や歯周病にかかりやすいのです。鏡でも見ることがむずかしく、気づかぬうちに進行していることがあります。
親知らずが生えてくると、隣の歯とのあいだに隙間ができます。この隙間は歯ブラシが届かず、プラーク(歯垢)が溜まりやすい状況になっています。細菌のかたまりであるプラークは歯肉に炎症をおこす原因となります。重症になると顔がはれ、口を開けにくくなり、ものを飲み込みづらくなったり、発熱や全身の倦怠感にまでおよぶこともあります。
親知らずがむし歯になったり周辺が歯周病に感染したりすると、親知らずの周りの組織に炎症を起こします。歯性感染症は頬や顎が大きく腫れたり、炎症が内臓などにも及ぶこともあります。歯性感染症は親知らずに限った病気ではありませんが、親知らずが原因となることも多い病気です。
親知らずが原因となって、顎の骨の中に液体や膿が溜まった袋(嚢胞)ができたり、腫瘍ができたりすることがあります。嚢胞が大きくなり感染すると、顎の骨をとかしたり、顎の骨の変形を招いたり、歯の動揺や歯の根っこが溶けて短くなったり、歯並びの乱れを起こします。
「親知らずの痛み」には様々な原因がからみあっています。強いストレスを感じると免疫力が落ちて細菌の活動に対して抵抗力が弱まり炎症が進行してしまいます。歯ぎしりや食いしばりが歯に悪い影響を与えるのは言うまでもありません。自律神経の乱れや唾液の分泌の減少が炎症を悪化させる原因となることもあります。リラックスしているときには痛みを感じないかもしれません。そのため「少し様子をみようかな」「なんだかだいじょうぶそうだけど」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。そうしている間にも症状は進行しています。
痛みや腫れといった症状には理由があります。歯が正常に生えてこようとする一時的な痛みの場合もあれば、細菌によって炎症が起きていることも、膿の袋ができてしまっていることも、歯並びが乱れる前兆のこともあります。ご自身で痛み止めを飲んだり、冷やしたりすることで、症状が楽になることはあるかもしれませんが、治るということはありません。放置しておくと、症状が悪化したり、将来的な歯並びや咬み合わせを狂わせたり、感染症であれば全身の健康にも影響を及ぼす可能性もあります。
こんな症状があらわれたら、我慢しようとせず、すぐ歯科医院の診療を受けてくださいね。
症状が軽いうちに治療にとりかかれば、治療自体の負担も少なくなります。違和感を感じたら早めにご来院ください。