木更津きらら歯科の歯科ブログ

「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。

25年12月23日

親知らずが痛い! 症例:顎骨嚢胞(がっこつのうほう)

こんにちは。千葉県木更津市にある歯医者「木更津きらら歯科」です。
親知らずのトラブルは多くの方がご経験がおありでしょう。でもひとことで「親知らずが痛い」といっても、いろいろな症例があるのです。
この患者さまは、親知らずに痛みがあり来院されました。こちらがCT撮影をした結果です。親知らずの横の下顎の骨の中に大きな膿の袋、嚢胞が形成されています。
木更津きらら歯科ではこのような症例に対応できる日本口腔外科学会専門医が在籍しています。ただこの患者さまのケースは、全身麻酔下での手術となりますので大学病院への紹介となりました。嚢胞はまれに悪性腫瘍の可能性もありますので、病変部位の一部を顕微鏡で詳細に観察する病理検査を受けていただき、良性という結果を得、それを受けて、治療計画をたてております。口の内側から切開して、嚢胞を摘出、同時に親知らずを抜歯、切り開いたところを縫合という手術となりました。

顎骨嚢胞とは

嚢胞とは体の中に発生した袋状の病変で、顎の骨の中にもできます。親知らずなど、顎の骨の中に埋まったままの歯の周りによく見られます。袋の中には液体や半液体状の内容物が貯まっていて、痛みはありません。症状がない場合はレントゲン検査などで偶然発見されることが多いのですが、痛みと腫れといった症状がある場合は感染しており、さらに重大な症状を引き起こすことになります。

顎骨嚢胞の症状

嚢胞が形成され、大きくなってくると、顎の骨や周囲の組織に圧力がかかり、顎や歯に痛みが生じます。顔の外側まで腫れることもあります。

嚢胞が感染すると、痛みや腫れは急激に悪化します。膿の排出や発熱がおこり、周りの骨が溶けていくことで顎の形が変化し、嚢胞が神経を圧迫して、下唇やあごの部分の感覚に異常をきたすかもしれません。痛み、腫れなどの症状がある場合は、さらに深刻な状態に発展する危険があり、早急に治療を受ける必要があります。

顎骨嚢胞の診断

X線、CTスキャン撮影の画像診断で嚢胞の正確な位置や大きさを特定し、嚢胞が周囲の骨や歯に与える影響を確認します。また歯の治療歴や外傷、や副鼻腔炎の治療歴なども詳細に確認します。そのうえで、治療計画をたてていきます。

顎骨嚢胞の病理検査

嚢胞が大きい場合には、腫瘍の発生がないか、採取した病変部位の一部を顕微鏡で詳細に観察する病理検査を行います。CTなどの画像から骨の破壊がわかった場合は、悪性であることも考えられるため、口腔外科としても精査していきます。

顎骨嚢胞の治療法

全身麻酔下で嚢胞すべてを摘出する方法をとります。原因となった歯が歯肉に埋没した親知らずの場合は抜歯を同時に行います。嚢胞が大きい場合には、入院して全身麻酔のうえ手術を行うこともあります。

親知らずはどうしてトラブルの原因になるのか

親知らずの抜歯で、全身麻酔で手術をすることもあるんですね。親知らずは奥歯(第二大臼歯)のさらに奥、前歯から8番目の歯のことです。第三大臼歯、智歯(ちし)と呼ばれています。上下の歯ときれいに噛み合って生えてくるのであればいいのですが、生えてくる時期が20歳前後と遅いため、親知らずのためのスペースがなく、歯並びを乱したり、むし歯や歯周病にかかったり周辺が炎症をおこしたりとトラブルの原因になることが多いのです。

親知らずが痛い! と感じるとき

奥のほうのまだ生えきっていない歯のあたりが痛いとき、ひとことで「親知らずが痛い」と言っても、原因は様々です。

歯が生えてくるときに感じる痛み

親知らずは生えてくるときに、歯肉を突き破って出てきます。歯肉や隣の歯を押すこともあります。親知らずがまっすぐ生えてくれば痛みは治まりますが、斜めや横向きといったおかしな方向を向いていると痛みが続くことがあります。

むし歯・歯周病

少し頭をだした親知らず。斜め横向きに生えていることも多く、歯ブラシが届きません。そのため、むし歯や歯周病にかかりやすいのです。鏡でも見ることがむずかしく、気づかぬうちに進行していることがあります。

智歯周囲炎(ちししゅういえん)

親知らずが生えてくると、隣の歯とのあいだに隙間ができます。この隙間は歯ブラシが届かず、プラーク(歯垢)が溜まりやすい状況になっています。細菌のかたまりであるプラークは歯肉に炎症をおこす原因となります。重症になると顔がはれ、口を開けにくくなり、ものを飲み込みづらくなったり、発熱や全身の倦怠感にまでおよぶこともあります。

歯性感染症

親知らずがむし歯になったり周辺が歯周病に感染したりすると、親知らずの周りの組織に炎症を起こします。歯性感染症は頬や顎が大きく腫れたり、炎症が内臓などにも及ぶこともあります。歯性感染症は親知らずに限った病気ではありませんが、親知らずが原因となることも多い病気です。

嚢胞(のうほう)などの病気

親知らずが原因となって、顎の骨の中に液体や膿が溜まった袋(嚢胞)ができたり、腫瘍ができたりすることがあります。嚢胞が大きくなり感染すると、顎の骨をとかしたり、顎の骨の変形を招いたり、歯の動揺や歯の根っこが溶けて短くなったり、歯並びの乱れを起こします。

体調が悪ければ親知らずも痛くなる

「親知らずの痛み」には様々な原因がからみあっています。強いストレスを感じると免疫力が落ちて細菌の活動に対して抵抗力が弱まり炎症が進行してしまいます。歯ぎしりや食いしばりが歯に悪い影響を与えるのは言うまでもありません。自律神経の乱れや唾液の分泌の減少が炎症を悪化させる原因となることもあります。リラックスしているときには痛みを感じないかもしれません。そのため「少し様子をみようかな」「なんだかだいじょうぶそうだけど」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。そうしている間にも症状は進行しています。

歯医者へ行くタイミング

痛みや腫れといった症状には理由があります。歯が正常に生えてこようとする一時的な痛みの場合もあれば、細菌によって炎症が起きていることも、膿の袋ができてしまっていることも、歯並びが乱れる前兆のこともあります。ご自身で痛み止めを飲んだり、冷やしたりすることで、症状が楽になることはあるかもしれませんが、治るということはありません。放置しておくと、症状が悪化したり、将来的な歯並びや咬み合わせを狂わせたり、感染症であれば全身の健康にも影響を及ぼす可能性もあります。

こんな症状があらわれたら、我慢しようとせず、すぐ歯科医院の診療を受けてくださいね。

  1. 腫れや痛みが数日続く場合
    親知らずの痛みが2〜3日以上続く、もしくはどんどん強くなる場合は、様子を見ている場合ではありません。すぐ歯科医院を受診しましょう。炎症が悪化しているかもしれません。
  2. 口が開きにくくなった場合
    口を開けると痛みが走る、または開きにくいという症状は、智歯周囲炎が進行しているサインかもしれません。
  3. 発熱やリンパの腫れを伴う場合
    親知らずの炎症が強くなると、発熱や、顎の下のリンパ節が腫れることがあります。この状態は全身に炎症が広がるリスクを示しています。
  4. 食事や会話に支障が出る場合
    痛みで食事がすすまない、話すのが辛いといった状況になったら、日常生活に支障をきたしているサインです。我慢せず、歯医者に行きましょう。

木更津きらら歯科にご相談ください

症状が軽いうちに治療にとりかかれば、治療自体の負担も少なくなります。違和感を感じたら早めにご来院ください。


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