「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
歯が丈夫な方は、医療費がかからず高齢になってもお元気な方が多いのだとか。歯の健康と全身の健康については多数の研究・調査結果が発表されています。
目次
自分の歯が多く保たれている人は、寿命が長いだけではなく、健康寿命が長く、要介護でいる期間が短かいのだそうです。
これは東北大学大学院歯学研究科の松山祐輔歯科医師による調査結果です。全国24自治体の要介護認定を受けていないご高齢者を追跡し、要介護になる前の歯の本数と、寿命・健康寿命(日常生活に制限のない期間)・要介護でいる期間の関連を調べたところ、自分の歯が多く保たれている人は、0本の人にくらべ、寿命が長いだけではなく、健康寿命が長く、要介護でいる期間が短いことが明らかになったということです。
これにより歯の健康を保つことが、健康寿命の延伸と要介護でいる期間の短縮に寄与する可能性が示されました。
歯の数と医療費の関係も明らかになっています。図表 7 は NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を活用した 230 万件の医科、歯科のレセプト(診療報酬請求明細書)の統合分析の結果を示したものです。医療費、横軸が年代、赤のグラフが歯の数が19本以下、紺色のグラフが20本以上ある方です。男女、年代を問わず、歯の数が 20 本以上のグループは 19 本以下のグループより、医科医療費が低いことがわかります。
歯の本数の多さとかみあわせがよい状態の方は、医科医療費が少ないことが確認された調査結果です。高齢者だけでなく、働く若い年代のうちから歯や咬合の状態をよく保ち、上下の歯で食べ物をしっかりかめる口を維持し続けることが、口腔の健康のみならず、全身の健康維持においても重要であると考えられます。これは歯みがきのサンスターグループが、25万人の働く人々を対象に行った調査の結果です。
企業の取り組みも時折話題になります。2012年の「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」成立記念シンポジウムにおいて、7万人のデンソー健康保険組合の理事の方が、歯の健康維持は加入者のQOL維持向上と、医療費全体の適正化に大きく貢献したという発表をされました。
また2011年のトヨタ関連部品健康保険組合(豊田市)と豊田加茂歯科医師会の共同調査では、定期的に歯石除去などをしている方は49歳を過ぎると医療費が平均を下回る傾向となったそうです。65歳になると平均が35万円に対して、定期受診の人は20万円以下とその差は広がっています。こちらは歯医者の検索サイト「EPARK歯科」を運営する、エンパワーヘルスケア株式会社のキャンペーンのプレスリリースで紹介されました。
お口の健康が保たれていると、全身の健康にもよい影響をおよぼし、医療費もかからなくなるというわけですね!
歯が痛くても、歯ぐきがはれたり、歯ブラシに血がついてきたりしても、死ぬわけじゃない・・・ と歯医者に行くのを先延ばしにしてしまったことはありませんか? それは大きな間違いです。お口の健康状態は、生涯にわたって全身の健康に大きく関係してくるのです。
噛むことの役割は、食べ物を砕いてすりつぶし、消化しやすくするという他にも、全身の健康を守る様々な効果があるのです。
食べ物をよく噛みくだき、消化酵素が含まれただ液と混ぜあわせて食べることで、胃腸への負担をやわらげてはたらきを活発にし、消化を助ける効果が期待できます。食物から栄養をきちんととりこむことができるのです。
よく噛むことにより脳が刺激され、血行がよくなるため、栄養と酸素が十分に供給され、脳の機能が活発になる効果が期待できます。
「よく噛むこと」は肥満対策のひとつとして期待されています。よく噛んで食べると食欲抑制のメカニズムがはたらきます。食べ過ぎに自然とブレーキがかかり、ダイエット効果が生まれて生活習慣病の予防が期待できます。
逆を考えてみてください。歯を失い、よく噛めない状態になると、栄養の摂取バランスが崩れ、脳への刺激が少なくなり、肥満のリスクも高くなります。。よく噛んで食べることができるというのは、健康を守るために必要なことなんです。
歯周病菌は、血管内に血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)をつくり、プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まってしまうことになります。血管が狭くなって、狭心症や心筋梗塞になるリスクが高まるということです。
歯周病の人は、脳梗塞になるリスクが3倍近くも高いのです。脳の血管のプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まってしまうのです。また歯周病原因菌は脳細胞を破壊する原因ともなる研究が報告されています。
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。歯周病治療で糖尿病も改善することもわかってきています。
高齢の方にとっては命の危険のある誤謬性肺炎。唾液に含まれる歯周病菌などの細菌が原因となるのです。
歯周病細菌は、胎盤をとおして胎児に直接感染することで、早産、低体重児のリスクが指摘されています。
歯周病由来の毒素は血糖値を上昇させます。
閉経後の女性は歯や骨が弱くなり、歯周病にかかりやすくなります。
台北の医大の研究で、歯周病菌が陰茎の血管内を傷つけている可能性が指摘されました。
「よく噛むこと」は肥満対策のひとつとして期待されています。よく噛んで食べると食欲抑制のメカニズムがはたらきます。食べ過ぎに自然とブレーキがかかり、ダイエット効果が生まれて生活習慣病の予防が期待できます。