「お口のコンサルタント(当院の歯科医師)」による、生涯安心して健康な歯で暮らしていくためのマメ知識をご紹介いたします。
口臭は、本人やまわりの人が不快に感じる呼気のニオイで、口臭があると自覚がある人は80%を超えるといわれます。一時的に強くなる生理的なものもあれば、舌苔(ぜったい=舌にたまった食べカスや粘膜、細菌のカス)の異常や歯周病などトラブルに原因があるものもあります。本当はそれほど臭わないのに本人が強く気にしている心理的な口臭もあります。
健康な人でも、肺から出てくるガスは100種類以上あります。。腸内に溜まったガスは、血中に吸収されたり肝臓で分解され、健康な人では肺から排出されても口臭の原因とはなりません。
誰でも、ある程度の生理的な口臭はあるものです。唾液の分泌が関係したり、活動時間によって強くなったりします。心配しすぎてもよくありませんよ! ではどんなときに口臭を感じるのか見ていきましょう。
口の中から出るニオイは特に唾液の分泌に影響されます。唾液には口の中を洗浄・自浄する作用があり、「噛む」「話す」といった、口の動きで唾液腺が刺激され分泌が増えます。唾液が減って口の中が乾燥すると自浄作用が低下し、タンパク質を分解する細菌が増えるので、口臭も濃縮されてニオイがきつくなります。
睡眠中は、唾液の分泌が減少し口の中が乾燥しやすいため、朝起きたときにもっとも強く口臭を感じるかもしれません。長時間食事をしていないときも、唾液の分泌量が減り、口臭が強くなります。
緊張したりストレスを感じると唾液の分泌量が減ります。というのも、唾液の分泌は自律神経が調節しているからです。唾液の分泌が促されるのは、リラックスして副交感神経が優位になっているときです。緊張したりストレスを感じているときに口臭が強くなるように感じるのは気のせいではありません。交感神経が優位になり、唾液の分泌を促す副交感神経の働きが低下して、唾液の量が減るからなんです。
妊娠時、月経時、思春期、更年期など、特に女性ホルモンが変調するときも口臭が強くなることがわかっています。確かなことはまだわかっていないのですが、精神的に不安定になり唾液が減る、ホルモンの変化で唾液が濃くなるといった原因が推測されています。
ニンニク、ニラ、ネギ、たくあんなど臭いの強いものは、胃の中で消化され血液を介して全身に循環し肺を経由して吐き出されます。アルコールや喫煙も同様です。いったん体内に取り込まれた臭いの元になる成分は、お口をきれいにしても臭うことがあります。
口の中のトラブルもなく、実際に臭ってはいないのに、本人が口臭を気にして社会生活の障害となっているような場合を心理的口臭症といいます。背景に強いストレスや不安などに起因するこころの病が隠れていることがあります。
そういった一時的な、生理的な口臭もありますが、気になるのは「周りの人とのコミュニケーションに問題が生じるような不快な口臭」ですよね。原因を理解して、対処していきましょう。
気になるのはこんな臭いではありませんか。
不快な口臭のほとんどは、口の中でタンパク質が細菌に分解・発酵される過程で発生するガスです。このときのタンパク質とは、お口の中の食べかすや、粘膜が剥がれ落ちたアカのようなゴミ、唾液などに含まれているものです。
この中でも腐った玉ねぎのような臭いを発するメチルメルカプタンというガスが問題です。硫黄を含んだ揮発性のガスで、口臭の強弱と強い相関があるとされ、口臭を評価する指標となっています。
強い口臭を起こす原因としてもっとも多いといわれているのが舌苔です。舌苔は、皮膚の垢のように、細胞が剥がれ落ちて舌に白く溜まり腐敗したものです。口臭の原因となる細菌やタンパク質を多量に含んでおり、口臭の6割が舌苔から発生すると言われています。
舌苔の次に多い原因が歯周病です。歯周病の特徴である歯周ポケットには多量のプラークがこびりついています。プラークは多量のタンパク質と細菌の固まりです。プラークの中のタンパク質が歯周病原菌によって分解されることで、腐った玉ねぎのような臭いを発するメチルメルカプタンが大量に発生するのです。歯周病にかかっている方は強烈な口臭があり、まわりの人から嫌がられるほど強烈なものなんです。
厚い舌苔や歯垢は、「バイオフィルム」と呼ばれる排水溝のヌメリのような状態になっており、細菌の温床となっています。簡単に洗い流すことはできず、殺菌・抗菌剤が効かないように細菌同士ががっちりと手を組んでいます。口の中にバイオフィルムとなって棲みつく細菌は、700種類にも達するといわれます。バイオフィルムの中の細菌が歯周病を引き起こし、口臭の原因となるのです。
感染による炎症が鼻やのどにあると、口の中に膿みが流れ込んで口臭の原因となります。扁桃腺炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)などが該当します。逆流性食道でも、胃液が食道に逆流することによって口が臭うことがあります。肝機能低下、腎機能低下、糖尿病、悪性腫瘍など、全身の病気による代謝物が血液中に増えて息が臭うことがあります。
鼻をつまんで口を閉じ、少し間を置いて鼻をつまんだまま口を開き、静かに息を吐いてみてください。出した息をかいでみて、不快な臭いがあれば口の中に原因があります。
口臭は、舌苔の増加や歯周病、むし歯などの口腔トラブルのサインかもしれません。歯科で治療するのが一番です。舌苔が多いときはブラシなどで取り除くというお手入れ方法もありますが、自分で行うと舌を傷つけてしまうこともあるので注意してください。歯科でクリーニングを行うのが安全で確実です。定期歯科検診は口臭予防という面でも効果があるんですよ。
口臭とともに鼻やのど、胃腸などの病気の症状があるときは、該当の科に相談しましょう。社会生活に差し支えるほど気になるのであれば、心療内科などに相談してみましょう。
口臭を防ぐには口の中の環境を整えておくことが大切です。特に舌苔や歯周病は強い交友の原因となります。舌苔をはびこらせず、歯周病を予防することが、口臭予防にも有効なのです。
それには毎日の歯みがきが一番効果があるのです。入れ歯の方はお手入れをきちんとしましょう。一時的な生理的口臭や、口の中の不衛生によるものは、口内をうるおしたり、歯みがきやデンタルリンス、マウスウォッシュなどで洗浄することでセルフケアできます。歯みがき剤は、口臭のもとになる細菌の除去が期待できるものがおすすめです。